口径・長辺55mm短辺50mm 高56mm
『葉形猪口』となっていますが、菱の実やコウモリにも見えます(ステルス戦闘機に見えないこともない)。もともとは何に由来したかたちなのか?図りかねますが、こうしたうつわを作るときでも、浜野さんは自己流にアレンジすることはしません。オリジナルに忠実なかたちで成形しています。絵付けの文様も、古典に元々ある絵柄はそのまま描きます。以前に紹介した菱形の小皿のように、種別が不明の魚ならそのままそっくりに描く。そこに作り手個々の思惑が入ったら、後に誤解や混乱を生むことになります。浜野まゆみのうつわが古伊万里の安直なコピーに見えないのは、オリジナルを尊重する制作態度が作品に反映されているからだと思います。
見慣れないかたちなので最初は奇異に感じますが、指が渡しやすく、案外(?)酒器に向いていそうです。縁がゆるいカーブになっているので口が当てやすい造形です。鉄絵具で、縁に『口紅』が施してあります。
もともとは『覗き(のぞき)』ともいわれる、筒向付だと思います。塩辛などを、食べているうちにうつわが汚れて見えるのは行儀が悪い、と筒状のうつわに入れたようです。