口径62mm 高68mm
日本人好み、ということもあるのでしょうが、サクラは工芸でもっともポピュラーな文様です。そういう文様にありがちなのは絵柄が定型化して、どのサクラも同じ柄になってしまうことです。陶磁器の絵付けも漆器の蒔絵も呉服の手描き模様も、文様というよりも記号に近いサクラの花をよく見かけます。分かりやすい、と言えば分かりやすいのですが、わかりやすい以上にそこにサクラを配置する意味があるはずです。
以前、浜野さんと話をしていて、「うつわに絵付けするのは、装飾以外(以上)に何らかの意味があるに違いない」という話題になりました。この湯呑みの絵柄を再び見て頂きたいのですが、いまこんなサクラを描いているのは浜野さんだけです。浜野さんがたまたま出逢った古伊万里の陶片の絵柄だそうです。350年ぶりによみがえった、と言ったら大袈裟ですが、浜野さんが見つけ手掛けていなければ、ずーっと眠り続けているに違いない。
浜野さんは、この湯呑みの先行する『色絵櫻花紋猪口』を最初に作ったとき、ぜひこの絵柄を描こう!と思ったそうです。そういう思い入れで作り手はうつわを作り絵付けをしている、とご理解ください。