口径90mm 高63mm ※共箱共布付
サワガニが摘まみの宝瓶は価格からも推察できるように、今までに紹介したひょうたん、松の実、桃の実などより上位のグレードで、製作数でもずっと稀少なグループのひとつです。数量的な比率でいったら全体の数パーセントでしょう。その理由は、画像で一目瞭然ですが、細工の緻密さにあります。わずかに右のほうが大きいハサミ(オスの特徴)、窪みからピコっと覗いた目玉、吐き出す泡が見えそうな口元、硬くて脆そうな8本の脚。どこを見てもカニらしさ?に満ちています。じっくりルーペで細部を観察して、見飽きることのない精巧さです。蟹が装飾になったやきものといえば真葛焼の宮川香山が有名ですが、キメが細かく可塑性に優れた備前の土の特性を十分に生かした入江光人司の沢蟹も、小品ながら見ごたえのある細工物の逸品です。
そして入江光人司の宝瓶は、どれもが不思議なほど摘まみが持ちやすい。甲羅と脚のあいだに親指と中指がぴたりと決まります。きっちり立っている面に支えられて、指がブレずに安定します。