口径102mm 高116mm ※共箱共布付
店舗(駒場東大前)の商品棚に並べている頃から、お客さんに「この藤原さんは、啓さんや雄さんの御親戚ですか?」と、よく尋ねられました。ですが、ちがう藤原さんです。陶臣は、明治生まれの細工名人、藤原陶斎の長男です(昭和16年生まれ)。陶斎に限らず明治生まれの備前の名工は、多くが細工名人でした。金重陶陽も若い頃に細工物をよくし、宮内庁に納めた対の獅子が出世作と言われています。
陶臣も手びねりの宝瓶(ほうひん。取っ手のない急須)など、細工物の作品も多い作家です。ロクロも細工も出来るのがこの世代の特徴でしょう。戦後生まれからロクロ専門で、細工をやらない作家が急に増えます。
この徳利は、表裏両面に『牡丹餅』がくっきり出ている珍しい意匠です。球体に近く、小さな口と相俟って可愛らしい造形です。黄胡麻(薪の灰が降って付着、熔けたもの)と牡丹餅の景色が、月と雲の絵模様のように見えます。この徳利で月見に一献、は趣向が出来過ぎでしょうか?