口径55mm 高62mm
複雑な模様と色の組み合わせがハラダマホの練り上げの持ち味、とも言えますが、その中にあって『よだか』のぐい呑みは異彩です。しばらく眺めているうち「もっと黒くてもいい……」と思ってしまいました。それも程度問題ですが。黒は無彩色なので厳密には色の範疇に入れないのかもしれませんが、他の色では出せない独特な効果が期待できます。画面を引き締める、分割する、重厚感を増す、などは黒が得意とするところです。黒は隣り合った色を引き立てる役もします。黒の一番のライバルは何色でしょう?赤、黄色、オレンジ、グリーンなどの原色が好敵手のようです。白は同じ無彩色ながら明度で好対照、「白黒をつける」の慣用句のとおり対極の存在です。ハラダさんの練り上げはカラフルですが、真紅に発色する顔料がないので赤のパートは欠けています。それを配色の工夫で寂しく見えないようにしていますが、そのとき黒と白のコントラストが画面を単調にしないよう、大きな働きをしています。『影』『白樺』『ピエロ』『よだか』など、多くの練り上げ作品が白黒の対比の強さでその魅力を増しています。白の発色にこだわって磁器土を使うのも、コントラストを重要視している為だと思います。また、顔料を鮮やかに発色させる為にも白い磁器土は欠かせません。グレーがかった陶土では意図する発色から、どうしても遠くなってしまう。ハラダさんの練り上げ制作に白い磁器土が必要なわけです。黒の話が白に変わってしまいました。黒を白、と言いくるめる……。