カップ:口径88mm 高68mm ソーサー:直径138mm 高21mm
『根子岳(ねこだけ)』は阿蘇五岳のひとつで、最高点の『天狗峰』は標高1433m、阿蘇カルデラの東側に位置する山です。山頂がギザギザで、その様子がネコに似ているから『ネコ岳』→『根子岳』になったという説があります。九州中の、齢をとったネコが根子岳に集まります。根子岳に棲むヤマネコの棟梁のもとで修業して、それが済むとそれぞれ家に帰ります。帰ったネコは、ほっかむりをして『かっぽれ』を踊ったり、障子戸を開け閉めしたりするそうです。以上が根子岳の概要(?)です。
『根子岳』は『錦』『さんご』『桔梗』『新芽』などと同じく『サザナミ』から派生した模様です。元々は四角い青海波でした。要素が複雑でないので、その分ヴァリエーションが生まれやすかったのだと思います。ハラダさんはベースに磁器土を使っているので、顔料の発色が陶土ベースに比べて明瞭です。加えて真っ白な素地とのコントラストで一層鮮やかに見えます。しかし磁器土は良いことばかりでありません。制作していて一番泣きたいのは、とにかく割れる剥がれる亀裂が入る、ということです。ワークショップの練り上げ体験で色土を巻き寿司状に重ねてゴロゴロ伸ばして輪切りに、すると断面が何と花模様に!この場合、使用されている色土は陶土ベースです。陶土だとパターンを作って成形するまで間を空けなくても接着します。一方、ハラダさんが使う磁器土は色土を組んで模様を作ってから最低3ヶ月、長いときは1年近く寝かして土同士を馴染ませます。その間も土の水分量を気遣い、ほぼ毎日観察を続けます。そこまで手をかけても本焼成で半分は割れます。その仕事を20年近く続けているのだから、作品のひとつひとつに込められた熱情と気力は膨大です。実物を見ればそれが分かります。