直径240mm 高70mm
タマミは1969年に中央競馬でデビューして、翌年の桜花賞を優勝した名牝です。『桜花賞馬』の称号は同世代で唯一頭の名誉ですが、タマミの人気はそれと別のところにあったと思います。クリッとした大きな目と額の流星が目を惹き「馬にも美人顔ってあるんだな……」と競馬初心者にも分かるほどの、ほかには中々見ない整った顔立ちのサラブレッドでした(馬がそれを美人と見るか?は別として)。寺山修司や虫明亜呂無がタマミを美少女になぞらえて数々の競馬エッセイを発表したほどです。
50年前の競馬は今から想像できないほど博打の色合いが濃く、特に浅草の場外馬券売り場は中々の紳士が集う鉄火場で、天井がタバコの煙で白くかすみ床には酔い潰れた御同輩がゴロ寝する、何処を見てもどんよりした雰囲気の社交場でした。そんな場末に集まったおじさん連中が「タマミ、かわいいね」と言っていたのです。「馬で美人と言ったらタマミ」の共通認識がその当時形成されていた、これは凄いことだよ!いまアンケートを取っても年代別(60代〜)の本命はタマミです。中央競馬会がJRAとヨコ文字になって競馬場がおしゃれなデートスポットになり、オグリキャップがアイドルになってぬいぐるみが販売される20年も前のことでした。
本年2019年は草堂開業20年、Web Shopに移行して3年、そして個人的な履歴ですが僕が競馬を見始めて50年になります。このメモリアル・イヤーにタマミと再会するとは!!そういえば、ずいぶん前に「好きな馬は?」とハラダさんに聞かれた憶えがあります。タマミと答えたのは、言いやすい名前だったのもありますが。
この練り上げ鉢は素地を一年近く寝かせたそうです。成形後に乾燥させるあいだも割れが出ないか、と細心の注意を払いました。♫藁にまみれてよ〜♫の苦労がしのばれます。ハラダさんは馬が意匠化されている様々な作品(フランスの有名馬具メーカーのスカーフだったり、楠木正成公像だったり)を見て、このデザインを決定するに至りました。近来稀に見る濃厚さと圧倒的な存在感(この図柄を練り上げで作る、という発想に先ず驚いてしまいます)、しかもハラダマホの独特な練り上げパターンが多数織り込まれている豊饒なアートピースです。そのうえ(?)名前が、タマミ。ハラダさんの年度代表作であることは間違いない。