口径44mm 高58mm
この色絵猪口は、正面右下にある『えくぼ』がチャームポイント(?)です。ロクロ成形のときにできた窪みですが、作者は敢えて正面に据えて絵付けをしています。ふつうなら瑕ものとしてハネる素地に手間をかけ、最終的には作品に仕上げました(たぶん、素地の段階で捨てがたい良さを浜野さんが見つけたのだと思います)。浜野さんは鉄粉や『降りもの』など本来なら磁器製作で忌避されるものを逆に取り込み、それらが作品の魅力がなるように工夫を続けています。今回の『えくぼ』の採用も同じことで、積極的に表現方法を探る浜野まゆみの一貫した制作態度と思われます。
浜野さんが描く桜は、花もつぼみも枝葉も常にみずみずしく、生命力にあふれています。今回の桜は花も枝葉も濃い発色で中々迫力があります。浜野さんの絵付けが職人のそれと違った良さがあるのは、うつわの成形から窯焚きまで作者がすべての工程に携わっている、という点が大きいと思います。うつわと絵柄がマッチングして、双方が引き立て合う。
素地段階の『えくぼ』を見つけて、浜野さんが「しめた!」とは思わなかったでしょう。ただ「山桜と合わせたら、いけるかも……」と思ったはずです。だから、この猪口が出来上がったわけです。というわけで、この『えくぼ』が魅力的に見えた方限定で、お勧めします!