直径65mm 高72mm
表面が白っぽく見えているのは、厚く掛かった釉薬の中にある泡のためです。拡大鏡で見ると、素地と釉薬の中に封じ込められた無数の泡が確認できます。そのせいで、染付の絵柄が若干、ぼやっとしています。色味も柄もはっきりしている市松模様なので、敢えてこんな工夫(?)をしたのでしょうか。釉薬が発泡しているのでミクロの凹凸が表面に生まれ、柔らかなさわり心地がします。磁器のツルりとした感触と大いに違います。湯呑みやぐい呑みなど、手に取って楽しむうつわにはこういうニュアンスが大切です。
絵付けのよさで人気がある浜野さんですが、市松模様のような単純な図柄を描いても味があっていいですね。桝目の大きさと数が雑でなく細かすぎず、湯呑みの寸法とちょうどいい割合です。腰に入れた花模様と口の裏側の紗綾形が、全体の密度を上げています。高台に入れた二本線が、締まった感じです。
明治時代の名人で、師匠の圓朝を凌ぐといわれた橘家圓喬は、九谷の小振りな湯呑みを名物裂の袋に入れて持ち歩いていたそうです。この湯呑みならそういうこともしてみたい!と思うこと必定です。