宝瓶:直径93mm 高65mm 湯さまし:直径92mm 高45mm 煎茶碗:直径55mm 高42mm ※共箱共布付
宝瓶と湯さましの景色がたいへん似ていて、最上の組み合わせです。どちらも、燃やしたアカマツの灰が掛かって『黄胡麻』になっています。それもあまり濃い色でなく、明るく発色しているのも共通しています。
摘まみの瓢箪は被った灰が溶けだす寸前で止まり、古木の肌のようなテクスチャーを現していますが、備前ではこれを『榎(えのき)肌』と呼びます。瓢箪の口の栓が、ポン!と音を立てて抜けそうな出来映えです。
瓢箪に巻かれた組み紐も、ほんとうに三本の紐を編んだみたいに、糸の交差した目が盛り上がっています。先端の房も糸のふわっとした質感が出ていて、細工の入念さにあらためて感心してしまいます。
把手のない宝瓶にとって、湯さましは必須と言える相棒です。うつわに一度移すたび、お湯の温度はおよそ10℃下がります。90℃のお湯を湯さましに入れ(一度目)、立ち上がる湯気をしばらく眺めて宝瓶に空け(二度目)、数分蒸らして湯呑みに注ぐと(三度目)、煎茶でちょうど飲み頃の65〜70℃になります。「湯さましを省いて80℃のお湯を宝瓶に入れたらいいじゃないか……」と言われたら、そのとおりなのですが、そこで敢えて一手間かけて湯さましを使う愉しみ、というものがあるわけで、そのためには手に取っても鑑賞しても楽しめる湯さましが必要、ということになってきませんか?
煎茶碗(五客)は、型打ち成形です。重ねて窯詰めしますが、熱で溶けてくっつかないように藁をあいだに挟みます。焼き上がると、敷いた藁が茶碗の内側に景色になって残ります。