口径47mm 高55mm
小振りですが素地が厚い造りで、意外と持ち重りがします。ウイスキーのショットグラスのような感じです。釉薬がたっぷり掛かって、高台の周りに淡緑色に溶けた釉が溜まって景色を作っています。
筒型のぐい呑みは保温力があるので、冬の燗酒に向いています。素地が厚いので熱燗でもだいじょうぶです。容量が少ないのでお燗が冷えないうちに飲み切れるのもいいですね。口が厚いのでボリュームのある日本酒に合っています。そういうこと?で、純米酒の熱燗が第一候補でしょう。
小津安二郎の映画には、料理屋で酒をやり取りする宴会の場面が数多く出てきます。その中で白眉は『戸田家の兄妹』の主人公、佐分利信と友人の笠智衆、山口勇の三人での宴会シーンです。キャッチボールのように一つの盃が行ったり来たりします。『彼岸花』の佐分利信、中村伸郎、北竜二もとてもいい。この三人はその後の『秋日和』でも宴会をしてます。冗談を飛ばしながら時には鋭く斬り込んだり、こういう雰囲気は映像でないと表現しきれないと思います。
親しい人と盃をやり取りしながらの宴会はとても楽しそうです。そのときの盃は持ちやすく渡しやすい、万一落としても丈夫な磁器の厚手なぐい呑みが好適です。その機能をすべて備えたのが、この猪口でした!